最近ちょっとマイブーム(よく考えてみると変な英語だ)なのが、 アイルランド地方の音楽です。実は私には高校時代にシドニーの街角に立って ティン・ホイッスル(*1)という楽器で、 ケルト地方のジグを曲芸のように速く演奏して小遣いを荒稼ぎをしていた という恥ずかしい過去があります(これでも昔は指がマワッた方なんです)が、 昨年の夏にワケあって人前でこの楽器を吹く機会があって、 奥が深いことを再認識しました。
世の中でもアイルランド(ケルト)地方の音楽は意外に流行っていて、例えば 昨年いろんなアカデミー賞をかっさらっていった映画に 「タイタニック」がありますが、映画中にドーソンがヒロインの手を取り踊るのが アイルランド地方のジグです。あとセリーヌ・ディオン (この前コンサートに行って来ましたが、それについては別の機会にお話しましょう)が 歌うテーマソングにも、 Low Whistle(*2)がオブリガートとして印象的に使われています。 もちろん有名なアーティストとしてエンヤも忘れてはいけません。
本題に戻りましょう。 最近私が良く聴いているのがアイリッシュ・フルートによる演奏です。 これまたクラシックのフルート演奏とは一線を画す特殊な奏法を用いています。 この楽器を演奏する人達は、例えばタンギング(*3)をしません。 どのようにしてアーティキュレーション(音の区切り)をつけているのかと言うと、 異音を挿入します。これは、cutやstrikeと呼ばれ、 異なった音程の音を一瞬だけ吹くことによって、 あたかもタンギングをしているかのような効果を得ます。 構造的にタンギングが不可能なバグパイプなどでも同じ奏法を用いています。 また旋律はそのまま吹かれることはなく、 rollなどの装飾を加えるのは必須のようです。
私が特に面白いと思うのは、使用している楽器です。 金属製のフルートを用いることもあるのですが、大抵は木製の楽器を演奏しています。 注目すべきは、それが木製のベームフルート(*4)ではなく、 いわゆる8 keyのクラシカルフルートそのもの だと言うことです。つまりいわゆる「古楽器」が、 実は民族楽器という扱いを受けている地域があるという事実。 そういえば、確かブリュッヘン氏が ヘンデルの木管ソナタ全集を録音した時に用いた楽器(現在は有田氏が所蔵)は、 イギリスの田舎街でお祭り囃子用に、200年以上使われていたものだとか。
異国の民族楽器(古楽器)の勉強をしている私達は、果して自分の国の音楽について、 どれだけ知っているのだろうか。考えさせられます。
注
今日の推薦CD: | |
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これも非古楽系のCDです。このモロイという演奏家は、 世界的フルート奏者であるゴールウェイ氏自身が 「尊敬する演奏者」として名を挙げた優れた音楽家です。 Boothy Bandなどの(一部?)有名なアイルランドのトラッドバンドを率いていたと 記憶しています。 それほどアイリッシュ・フルートの演奏を聴いている訳ではないですが、 他と比べて、とにかくノリが良い。音はかすれているし、 妙なヴィブラートをつけたりして、それほど好みの音ではないのですが、 聴いているうちに、踊りだしたくなるような楽しい演奏です。 バロック音楽のGigueも、こんなにイキイキと演奏できないもんかなと 思います。 |