最近ヨーヨー・マ氏がバロックチェロのCDを出しました。 以前のピアソラ(*1)はそれほど悪くない演奏だったのですが、 今回はトン・コープマン氏と共演するし、 自分のチェロをバロックコンディションにしたということで、聴いてみました。 この人、なかなか面白い試みを実際にやっちゃう所がすごいと思います。
内容は、バッハの(言っちゃ悪いが)ちゃらっとした有名な曲を チェロとオーケストラに編曲したモノと、ボッケリーニの協奏曲。 オーケストラには、 数年前に日本でモーツァルトの交響曲チクルス(*3)を 敢行した記憶が新しい、アムステルダム・バロック(*4)。 マ氏は、自分の愛器であるストラディヴァリウスをバロックコンディションにした そうですが、さすがにネックや指版を取り換えるまではせず (そこまでやると戻すのが大変ですから)、駒、テイルピース(解説では「緒留め版」)、 弦(生ガット弦)を交換したようです。 もちろんエンドピンは取り外し、足で抱えて演奏したそうです。
で、実際の演奏ですが、さすがと言わざるを得ないですがウマイ。 (私はバロックチェロの専門家ではないのですが)古楽の奏法も出来ているみたいだし、 それでいてマ氏の「音」もきちんと出てきています。 ボッケリーニの協奏曲の超絶技巧は聴かせてくれるし、音程も良い。 …のですが、全体的な印象は中庸。あまり個性がなくて大味な感じ。 技量のある人だと、時間が経ってもっと自分のモノにしてしまえば、 更に踏み込んだ演奏が出来るのかも知れないので、今後に期待したいです。 ひょっとすると、この非凡なテクニックと中庸だが万人受けする演奏が、 マ氏の特徴なのかも知れませんがネ。
注
今日の推薦CD: | |
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またしても鈴木秀美氏のチェロです。 今日のような話題ならば、 バロックチェロのカリスマ、A.ビルスマ氏を推薦したかったのですが、 どうしても推薦したい名演奏(このCDは私の中ではその年のベスト盤でした)なので、 推薦します。 古楽器ではありますが、 本来、曲が意図したアルペジオーネを使わずチェロピッコロで演奏したものです。 ただ、アルペジオーネソナタに適したスコラダチューラ (通常の調弦と異なった音に各弦を調律すること)にしてあり、 独特の音色がでています。それが顕著に出るのが第3楽章で、 アルペジオのパッセージで妙な共振音が聴こえて来ます。 アルペジオーネソナタはフルート用にも編曲があり、 いろいろな演奏を聴いて見ましたが個人的には決定盤とも言えるデキだと思います。 カップリングがL.v.ベートーヴェンのチェロソナタ3番。 チェロよりも曲の主体となるピアノ(実際にはフォルテピアノ)を演奏をする 小島氏の演奏は、テクニックもさることながら情熱的。 チェロとピアノの関係には切磋琢磨と言う言葉が適切かと思われる、 実に素晴らしい演奏です。 これも、やっぱり個人的にはビルスマやクイケンの演奏を越えた、 決定盤だと思います。チェロ好きもそうでない人も、是非! |