バロック音楽は、1600年に始まったとされるのが定説です。 モンテヴェルディ(*1)などの作曲家が、1600年の正月の朝に、 「今日からバロックの時代だから、ちょっくらキアイいれて頑張るか」 と言ったかどうかは知りませんが、とにかく1600年だそうです。
1600という非常にキリの良い数字に、 「ナゼ1600年ナノダ?」という疑問が湧きあがるでしょう。 実はこの1600年というのは、ペーリという作曲家による世界初のオペラ、 「エウリディーチェ」が上演された年で、 この曲をもってバロック時代の幕開けとしているのが通説です。 つまり、これ以前にバロック音楽はなかったのです。 記念碑的な曲なので、「さぞかし良い曲なんだろう」と期待は高まり、 胸も高鳴り、血湧き肉踊り、酒池肉林状態になってしまう(のか?)ところですが、 楽譜がないので演奏が不能だそうです。がっかり。 ま、でも、同時代の音楽は山程残っていますから、 どんな雰囲気の曲だったかは想像することができます。
バロック音楽に到達した流れを知るためには、 それ以前の音楽についても知らなければなりません。 バロック時代の前にあったのは、ルネサンス時代です。 昔から西洋では音楽と宗教は密接に結び付いて来たモノですが、 なにしろ一般的に宗教というのは色々な制約がありますから、 当然教会で演奏される音楽にも、 やってはイケナイことや「お約束」が色々ありました。 「てやんでぃ、こんなことやってられっかぁ!」 と言ったかどうかは分かりませんが、モンテヴェルディ等の作曲家は、 この制限から外れ始め、民族音楽などを採り入れた、 娯楽のための音楽を書き始めたのです。これがバロック音楽の始まりです。
何事も、始まる時はかなりのエネルギーが必要とされますが、 バロック音楽の始まりもしかり。 初期バロック音楽は、譜面ヅラ(*2)はやさしいのですが、 実際には生気に溢れる音楽であったと想像されます。 よく「バロック」の本を読むと、 「バロックとは『歪んだ真珠』のことである」なんてことが書いてあったりしますが、 「バロック音楽って綺麗」というイメージを覆す、エネルギーに満ちた演奏を聴くと、 「なるほどバロックは歪んでいるんだなぁ」と納得できます。 つまり、私が言いたいことは
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三日坊主常習犯の私にしては、もうこの雑記帖も長いこと書いて来ましたが、 今までの推薦CDの中に、 バロックの声楽音楽が全く含まれていないことに気づきました。これはマズいです。 ちょっとバロック音楽を知っている人ならご存知かと思いますが、 バロック音楽の真髄は声楽にあると言っても過言ではないからです。 とは言え、普段が楽器演奏、歌うのはカラオケばかりという筆者にとって 声楽はいささか苦手なんですけど。 本日紹介するのは、モンデヴェルディの「オルフェオ」。 原曲は素晴らしいオペラで、 これぞほとばしる情熱に溢れる初期バロック音楽の典型でしょう。 ストーリーを思いきり要約すると、 ギリシャ神話のオルフェウスという楽士が結婚をした矢先に、 相手のエウリディーチェが蛇に噛まれてあっと言う間に死んでしまうのですが、 色んな困難を経て彼女を黄泉の国から引き戻すというお話です。 この演奏は、90年代の古楽演奏の流行りとも言える、 分厚い通奏低音が特徴的で、指揮はカウンターテナーの名手、 ルネ・ヤコプスです。1992年に「東京夏の音楽祭」で来日した時は、 「猫手パンチ(C)ミッキー・ローク」ならぬ「猫手指揮」の印象が強烈でした。 今回の推薦盤の他に、 ガーディナー指揮の演奏、 アーノンクール指揮のWien Concentus Musicusの演奏がありますが、 アーノンクールのモノはLDやVHSなどの映像版も存在し、 バロックオペラの雰囲気だけでなく、演奏される珍しい楽器も観ることができます。 |