Last modified: Sat May 22 20:10:55 JST 2004

書籍紹介

データは題名、著者名・訳者名、第1刷発行年月日、出版社、ISBN番号、 値段(その値段で売っていた時期)、オススメ度の順に並べています。 書籍の順番は一応五十音順です。


"On Playing the Flute"

Joham Joachim Quantz (Tran. Edward Reilly)
17??年
Faber and Faber
ISBN-0-571-18046-9
3600円(1992年)
★★★★☆

トラヴェルソ演奏家に限らず、バロック時代でもっとも重要な参考文献の一つ、 いわゆる「クヴァンツのフルート奏法」です。 クヴァンツは演奏家だった他に、 プロシアのフリードリヒ大王のフルートの先生であり作曲家でもありました。 この本は英語訳ですが、日本語訳も出ています。

前半はフルートの演奏法に終始しますが、 技術的なガイドだけでなく精神論などまで言及してあり、 目から鱗が落ちるようなくだりが幾つもあります。 後半は楽器演奏者一般の話になり、 オーケストラの構成法や指導の仕方など、 当時プロシアの宮廷でどのように音楽が演奏されていたかを知るための 如実な資料と言えます。

当時の書籍なので読みにくく、更に分厚いので、 万人にお勧めできる本ではありません。 が、プロアマ問わず、 古楽の理解を少しでも深めたい演奏家なら目を通しておいて損はありません。

"The Early Flute"

John Solum
1992年
Oxford University Press
ISBN-0-19-816253-7
7200円(1994年)
★★★★☆

ルネサンスからクラシカルまで古いフルートに関する情報満載です。 とにかく写真が多くて見ているだけでも楽しいです。 また、演奏の技術やスタイル、はては楽器の買い方まで盛り沢山。 著名なトラヴェルソ製作家の住所まで書いてあったり、 これまた膨大なBibliographyなど、トラヴェルソ奏者は必須の本でしょう。

"Flute Music of the 18th Century"

Frans Vester
1985年
Musica Rara, Monteux, France
ISBN-2-9500646-0-4
ペーパーバック版16,800円(1993年)
★★★★★

古楽器としてのフルートの先駆者であった、 フランス・フェスター氏(フランス・ブリュッヘンの師匠でもある)の ライフワークの一環。この後に19世紀、20世紀と来る予定だったのですが、 かなわず1995年に他界してしまいました。 この本には18世紀のほとんどのフルートのレパートリーが作曲家別に列挙されており、 現代の出版社や原典が保存されている図書館の情報まで、 まさしく最強の情報源です。

どんなフルート奏者でも必須です。躊躇せずに何にも考えず買いましょう。 ペーパーバックになって買いやすくなりましたし(ハードカバー版は本当に高かった)。 私も学生の時に「今しかないよ」と村松の店の人に言われて、 かなりの無理をして購入。しばらく間昼飯が食べられませんでした。

"Instruments of the Middle Ages and Renaissance"

David Munrow
1976年
Oxford University Press
ISBN-0-19-321321-4
★★★★★

これをなくして中世・ルネサンスの器楽を語るなかれ。 古楽器が時代考証にのみ終始したと思われていた時代に、 古い楽器と見かけは単純な楽譜を用いて、 「あっ」と驚くような生き生きとした音楽を作り出した天才、 デヴィット・マンロウの名著です。とにかく写真と説明が豊富です。

この本を読んでいても、実際の音を聴かないと納得できないと思います。 そんな欲求を満たしてくれるのが、同名のLP/CDです。 実はこの本は、当初LPとの連係で出版されました。 1996年に山野楽器より2枚組のCD(YMCD-1031-32)として復刻され、 マンロウ率いる The Early Music Consort of London の巧みな演奏が、 今でも素晴らしい音質で聴けます。

当時は駆け出しの演奏家だった、 Academy of Ancient Musicの指揮者であるC.Hogwoodなどの若き写真を 探して見るのも通な楽しみ方かも知れません。 因みに、この本には「中世・ルネサンスの楽器」という日本語訳(柿木吾郎、 昭和54年4月20日初版)も出ています。

私はこの原書を先輩リコーダー奏者の根岸基夫さんから譲って頂きました。 宝物の一つです。

"The Recorder and its Music"

Edgar Hunt
1962年
Ernst Eulenburg Ltd.
ISBN-0-903873-05-2
★★★★☆

この本も日本語訳が出ていると思われます(日本語訳の情報を探しています)。 リコーダー界の大御所エドガー・ハント氏による、 リコーダーの歴史とレパートリーが列挙されています。 情報としては多少古めですが、 若き(本当に!)フランス・ブリュッヘンの写真とかあって、大変面白い本です。 Solumn氏のフルートの本のお手本とも言えるぐらいの良書です。

「秀吉が聴いたヴァイオリン」

石井高 著
1993年9月28日
三信図書(有)
ISBN4-87921-108-7 C0173
583円(1993年)
★★☆☆☆

クレモナ在住の日本人ヴァイオリン製作のマエストロが著した本で、 異国の地でのヴァイオリン製作の苦労話や古楽器(秀吉が聴いた?)についての 自らの調査など、読み物として大変面白い本です。 当時の演奏の再現としてガンバで有名な神戸さんが、 実際にその復元された楽器を用いて数年前に演奏したと記憶しています。

「響きの考古学 -- 音律の世界史」

藤枝守 著
1998年7月5日第1刷発行
(株)音楽之友社
ISBN4-276-33084-X C1073
★★★☆☆

基本的に調律法とはピタゴラスコンマをどう扱うかの方法論だと思うのですが、 遥か昔の古代ギリシャから20世紀に至るまで、 どのようにこれが扱われて来たかの歴史に沿った説明があります。 どんな時代の音楽または楽器をやるにしても、 予備知識として手に入れておいて損はないでしょう。 実践には別項に挙げる(予定の)横田誠三さんの「鍵盤調律法」がお勧めです。 この本、実はまだ読了していません。

「リコーダー復興史の秘密 -- ドイツ式リコーダー誕生の舞台裏」

安達弘潮 著
1996年11月20日第1刷発行
(株)音楽之友社
ISBN4-276-12461-1 C1073
1,648円(1996年)
★☆☆☆☆

ドイツ式リコーダーとは、一般的に小学校で教えている「タテブエ」です。 リコーダーを古楽器として演奏する人達は、 一般的にドイツ式リコーダーを忌み嫌います。 ですが、忌み嫌っている割にはテキの事は意外と分かっていない事が多いです。 日本においてリコーダーが普及しているのはやっぱり小学校で教えているからですし、 ましてや同じ古楽器のクルムホルンなんかより説明が楽だと 感謝しなければならないはずです(ホントか?)。

この本は、リコーダーが如何にして「ドイツ式」になったか、 不幸な経緯をドキュメンタリー風に綴っています。 万人に勧めできる書物ではありませんが、 リコーダー愛好家なら目を通しておいても良いかも知れません。

「『古楽器』よ、さらば!』」

鈴木秀美 著
2000年11月25日第1刷発行
(株)音楽之友社
ISBN4-276-21187-5 C1073
2,100円(2001年)
★★★★☆

18世紀オーケストラ、ラ・プティットバンド、 バッハ・コレギウム・ジャパンなど国内外のオケで活躍している チェリストの鈴木秀美さんの初の著書です。 今や『古楽器』は一般化して来たもので、 敢えてその名称にこだわることもないのではないかというアンチテーゼからの題名。

基本的には、演奏会パンフレットやマスタークラス等の原稿を 寄せ集めて加筆をした本で、チェロのこと、バッハのこと、ガット弦のことと、 3部に分かれています。雑談的なエッセイも含め、 チェリストの目から見た古楽周辺の話題が盛り沢山。 もちろん、チェリストだけでなく弦楽器奏者、そして、 古楽一般に触れる機会のある人には目を通して貰いたい一冊です。

ベートーヴェンのピアノとチェロのソナタも全曲録音が終り、 2001年からいよいよ活動の軸足を日本に戻すという噂。 日本を代表するバロック(?)チェリストとして、 これからの活動も目が離せません。


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