ドイツ北部の都市ハンブルグで活躍したテレマンは、 当時においては同時代人のJ.S.バッハよりも高名な音楽家として知られていました。 本日演奏する四重奏と三重奏は 「食卓の音楽(ターフェル・ムジーク)」と題される曲集に含まれている作品です。 この「食卓の音楽」は、文字通り帰属や裕福な市民たちが催す豪華な会食の際に 演奏する目的で作曲されたものです。 この曲集はテレマンの代表作のひとつであり、 このような素晴らしい音楽に彩られた宴は、 さぞ愉悦のひとときだったことでしょう。
四重奏ト長調は、全体にのびやかな明るさに満ちており、 8分の12拍子の優雅な響きで始まります。四つの声部が、 ある時は掛け合い、ある時は寄り添いながら曲が流れてゆきます。 楽器の音色の重ね方によって変化する色彩豊かな響きをお楽しみ下さい。 三重奏ホ短調は、愁いを漂わせつつも凛とした美しさを湛えた名曲です。 緩徐(第1、3)楽章における歌心に満ちた語り口と、 第2、4楽章の躍動感溢れるリズムとの対比が聴きどころです。
テレマンはファンタジアと名づけた無伴奏のための作品として、 チェンバロのために36曲、フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、 ヴァイオリンのために、それぞれ12曲ずつ残しています。 1735年に作曲されたヴァイオリンのための12曲は、 J.S.バッハの無伴奏のような難解さはなく、また、 どの曲も5〜8分と時間的に小粒ながら、よく響く作品に仕上がっています。 今日はその中でも、跳躍の妙が楽しめる12番、 終曲に幸せなジーグの入った4番をお届けします。
現在ではあまり知られていないですが、 18世紀後半から19世紀にかけてウィーンで大活躍した ジーロヴェッツという作曲家がいます。 当時は、モーツァルトと人気を二分したというぐらいの有名な作曲家だったようで、 大変多くの曲を残しました。 この三重奏曲は、本日演奏する他のバロックの楽曲とは一線を画した、 少し新しい時代(古典派)の音楽です。 ほとばしるような勢いのある第一楽章、 各楽器同士のおしゃべりが印象的な第二楽章、 そして最後にロンド形式の活気に溢れる第三楽章をお楽しみ下さい。
バロック時代には、声楽曲を器楽曲に編曲したり、 器楽曲を他の楽器編成に編曲することは頻繁に行われました。 バッハも、こうした当時の風潮に従い、 自作あるいは他作からの編曲を数多く行っています。
ソナタ ニ長調は、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ イ短調BWV1003の編曲です。 本日は、1,4楽章を演奏致します。 チェンバロの響きを生かしたスケール感豊かな音の造形美をお楽しみ下さい。
ヨハン・クリスチャン・バッハは、J.S.バッハの一番下の息子です。 ドイツで音楽的才能を培った彼は後半生はロンドンにて活躍し、 幼少期のモーツァルトにも大きな影響を与えました。この五重奏曲は、 バロック音楽特有の通奏低音(チェロとチェンバロの左手が同じ音を弾く)がなく、 チェロとチェンバロがそれぞれ独立した声部を担当しています。 バロック音楽の枠をはみ出した、優雅でのびのびとした響きが楽しめる作品です。 どのパートにもかっこいいソロが出てきますので、お聴き逃しないように。